新色&再入荷『WINK』愛らしく、秘密を宿す魅惑の視線
二十代の頃、僕はフィレンツェの美術学校で彫刻を学んでいた。
時間がゆったりと流れるあの街で、僕はひたすら石と向き合い、形を削り出すことに没頭していた。
東洋から来た若者に、人々は意外なほど優しく、なかでもアパートの大家でもある白髪のマダムは、何かと気にかけてくれた。
優しい笑顔で焼きたてのパンを差し入れてくれる、穏やかで優しい女性だった。
ある朝、友人と語り明かしたあと、立ち寄ったカフェ。
ふと目をやると、そこにマダムがいた。
見知らぬ男性と並び、まるで長年の恋人のような親密さで朝食をとっていた。
「なぜここに?」
思わず動きを止めた僕に、彼女は気づき、一瞬だけ片目を閉じた。
誰にも気づかれない、小さなウィンク。
それは、軽やかで、悪戯っぽくて、そしてとても愛らしい秘密のサインだった。
それ以来、ウィンクという仕草には、僕の中でほんの少しの高揚と、心くすぐる親しみが宿るようになった。

30年後の東京で出会った『WINK』
あれから三十年が経ち、東京のカフェでふと、あの朝のマダムのことを思い出すことがある。
年齢を重ねても、あんなふうに軽やかにウィンクができたら素敵だ。
けれど今でも僕は、その一歩が踏み出せずにいる。
そんな僕が、思わず手に取ったフレームがある。
Mr.Gentleman EYEWEAR の『WINK』。
まるであの時のマダムの秘密のサインのように、さりげなく、でも確かに心をくすぐるアイウェアだ。
女性アパレルブランドとの協業から生まれたデザイン

『WINK』は、ブランド立ち上げ初期の協業から生まれた。
コラボレーションの相手は、広島を拠点とする女性向けアパレルブランド「Wei」。
「Mr.Gentleman」というブランド名がもたらす男性的な響きに対し、実際には多くの女性たちもMr.Gentlemanのフレームを手に取っていた。
その現実に寄り添うように、デザインには女性の感性が静かに重ね合わされた。
こうして始まった“W”から始まるラインのひとつが、『WINK』である。
柔らかさと芯の強さを併せ持つシェイプは、誰の表情にも自然に馴染み、目元にそっと秘密の余韻を残す。
ボスリントンという美しい中庸
『WINK』は、“ウェリントン”と“ボストン”の良さを融合した「ボスリントン」型。
直線的すぎず、丸すぎず、その中庸のバランスは、クラシックの美意識を保ちながらも柔らかさを宿している。
端正な輪郭をもつ男性にも、しなやかな線をもつ女性にも、自然に溶け込むフォルム。
硬さと優しさのあいだで揺れるこのシェイプは、掛ける人の個性をそっと引き立てながら、心地よく馴染む。
ストレートで柔らかくしなるテンプル構造
『WINK』の大きな特徴のひとつが、ストレートに伸びるテンプル(つる)だ。
通常は耳の後ろで折れ曲がる“への字型”が多いが、このモデルはあえてまっすぐに設計されている。
そのフォルムは、どこかヴィンテージを思わせる佇まいを演出する。
さらに内側の削り込みを通常より広く設け、圧力を分散。
テンプルの厚みも抑えられているため、外側からの力にしなやかに応え、掛けると自然に“ふんわりと包み込まれる感覚”を生み出す。
耳元を強く押さえ込むのではなく、両手でそっと支えるような安定感。
それが『WINK』特有の優しい掛け心地であり、長く愛される理由のひとつとなっている。
「サクラ」と「ブランクラウド」愛らしさの中にある深み
今回登場する新色は「Sakura」と「Brown Cloud」。
定番のブラックに加え、日常にさりげない彩りを与えてくれる。
WINK-A Black
定番のブラックは、白シャツやモノトーンの装いに合わせたい。
シンプルなコーディネートに静かな存在感を与え、余計な主張をせずに知性を引き立てる。
オフィスにも、休日のジャケットスタイルにも自然に馴染む一本。
WINK-O Sakura

黒を基調にピンクが差す「Sakura」は、光を受ける角度によって表情を変える。
控えめでありながら、ふとした瞬間にきらめくピンクが、カフェで誰かと視線を交わすときや、気心知れた友人と過ごす午後に華やかさを加える。
秘密を共有するような、小さなときめきを忍ばせるフレーム。
WINK-P Brown Cloud
茶と黒の配色が美しい「Brown Cloud」は、クラシックな雰囲気を大人らしく装うカラー。
秋口のウールコートやレザーの小物と相性がよく、落ち着きのなかに少しの冒険心を漂わせる。 男女問わず、スタイルに奥行きを与える1本だ。
目元に宿る小さな秘密
『WINK』は、僕に遊び心を運んでくれる。
軽やかで、けれど本気で、誰かの心に触れてしまうような愛嬌をそなえて。
このフレームを掛けていると、胸の奥にひそんでいた秘密がふと息を吹き返す。
あの頃のように、ただ目と目で交わすだけで世界が少し変わって見えるような。
それは、三十年前、フィレンツェのマダムが教えてくれたもの。
小さくて、愛らしくて、今も僕の心に生き続ける“秘密のサイン”だ。
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